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RESEARCH

本研究領域では精神疾患,高次脳機能障害に対する効果的なリハビリテーションの開発を目指し基礎研究および臨床研究を行っています

タッチ

脳損傷後に生じる感覚入力経路の再編成と新規介入方法の開発

目的

わたしたちは運動機能と感覚機能を協調されてあらゆる動作を行っています.例えば目の前にあるコップに手を伸ばす際は腕の位置情報などの‟感覚機能”と動作を実施させる‟運動機能”を担う神経ネットワークが情報を統合して動作を遂行します.

脳卒中などにより脳実質を損傷すると情報統合が阻害され正確に手を伸ばせなくなってしまいます.

現在,感覚障害への効果的な介入法はほとんどありません.この要因としては,大脳皮質より下部で体性感覚伝導路の左右連絡がないとされ,代償機能が生じ難いことが挙げられます.

近年,わたしたちは複数の視床出血症例で通常ではみられない感覚情報の左右間相互作用を確認し,感覚伝導路において,脳卒中後に通常不使用の経路が顕在化する,または新経路が形成され得ることを示唆しました (Ishii et al, 2021, Ishii et al, 2021).

 

そこで本研究プロジェクトでは,齧歯類・ヒト患者を対象とした電気生理学的検討と解剖学的検討から,非常時における感覚情報の伝達機構を明らかにすることを目的としています.さらに,末梢・脳への適切な刺激法を開発し,感覚機能に対する新たな非侵襲的臨床介入法の考案および提案を行います.

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臨界期を超えて半側空間無視からの回復を誘起する新規物質の同定

目的

半側空間無視 (Unilateral Spatial Neglect, USN) は大脳半球の損傷により生じる高次脳機能障害のひとつで,損傷半球の反対側への注意や反応が障害されます.

USNはまた,更衣や移動といった日常生活活動に支障となり,在宅への復帰を困難にさせます.

 

USNに対する治療として,反復性経頭蓋磁気刺激,経頭蓋直流電気刺激,視覚探索訓練,プリズム眼鏡を用いた訓練などが行われていますがその効果は限定的で,USN症状が残存する患者も多く存在します(脳卒中治療ガイドライン2021).

さらにUSNに対する薬物療法の開発も進められ,期待されていますが有効性が明確に示された薬剤はまだありません.

 

そこで,本研究プロジェクトでは若年者でUSNの回復能が高く,高齢であるほど残存しやすいことに着目して,年齢による回復能力の差に寄与する分子メカニズムを解明し,さらには薬剤投与による効果的なUSN治療法の開発へ繋げます.

これまでに,わたしたちは半側空間無視のモデルマウスの開発に成功しています (Ishii et al, 2020).今後はこのモデルマウスを用いて研究を進めていきます.

洪水

恐怖記憶の消去法の開発

​目的

心的外傷後ストレス障害は強い恐怖体験で形成される恐怖記憶により,不眠などの症状を引き起こす障害で寛解後30-50%の患者が再発すると言われています.この症状の再発は,治療後も消えずに残る恐怖記憶が再燃することで引き起こされます.

そこで,本研究プロジェクトでは臨床応用可能なヒトの恐怖記憶を完全に消去する方法を開発し,関連疾患の再発防止に貢献することを目的とします.

恐怖記憶はその獲得後6時間以内に起こる固定化と想起後6時間以内に起こる再固定化を経て強固なものになります.これまでにタンパク質合成阻害薬の投与や行動療法がその固定化、再固定化を阻害し、恐怖記憶を消去することが報告されていますが,タンパク質合成阻害薬はヒトへ使用できない点、行動療法はその効果を否定する論文がわれわれを含め多数報告されている点で恐怖記憶を消去する有効な手段として臨床応用は十分期待できません (Ishii et al. 2012, Ishii et al. 2015).

 

一方で,非侵襲的にヒトの神経活動を修飾する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を恐怖記憶の獲得直後に行うことで,その後起こる固定化の阻害に成功した報告もあります (Asthana et al. 2013).この方法は副作用が少なくヒトへ使用できる点で注目を集めています.

 

しかしながら,恐怖記憶の固定化阻害を目的とするこの方法は,恐怖を獲得した直後にtDCSを施行する必要があり,恐怖体験直後に治療することが難しい現状を踏まえると現実的な方法とは言えません.

そこで,わたしたちは恐怖記憶の想起後にtDCSを実施することで再固定化を阻害し恐怖記憶を完全に消去する方法を確立したいと考えていいます.

Ibaraki Prefectural University of Health Sciences

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